準の、心はたしなむ程度です

メンタルヘルスィ~を目指す人を応援するブログ

あなたも騙された!?『過労死』と報道するのが違和感MAXな件について

電通事件の原因は、ほんとにほんとに過重労働だけなの?

 

お正月に親戚と集まっていたとき、電通の新卒社員だった女性が自殺してしまった事件が話題に。

 

「かわいそうにね…会社に長時間働かされて、自殺しちゃったのね…」

 

(やはり、みんなそういう風に捉えているのか…)

 

まず、亡くなられた新卒社員の女性のご冥福をお祈りいたします。

 

この悲しい事件の背景を伝える報道のキーワードは、過重労働、残業110時間、嘘の労働時間申告の強制、に偏っていた気がします。

 

政府の発言を見ても…

 

官房長官

長時間労働是正が重要

 

塩崎厚生労働大臣

―法律(=労働基準法)が守られていない状況があるということを考えると行政側のパワーアップも必要ではないだろうか

 

と、この事件が長時間労働によって発生したかのような発言が目立ちます。

 

 

でも、この事件の本質的な原因は過剰労働とは別のところにあると薄々感じ、違和感を覚える人は、案外いるんじゃないかと思うのです。

 

とある産業医の方の記事を見つけました。

zasshi.news.yahoo.co.jp

記事内には、こんな文章が書かれています。

 今年の『過労死等防止白書』で過労死に関わる労災補償の状況をみてみると、残業時間が1か月で80時間を超える人たちばかりに精神障害にかかる労災が認定されているわけではありません。

 脳や心臓の疾患の場合は残業時間が1か月で80時間を超えたケースの件数が多いですが、精神障害の場合は労災認定されたケースの約20%は、残業時間が1か月で80時間以下であり、業務による精神障害の発症は、残業時間が短くても十分に起こり得ると考えられます。

 現に私の産業医クライエントには、長時間労働だけれども精神的不調にならずに元気に働いている人もいます。また、残業時間が少なくても、精神的不調に悩む人、それで仕事を休む人もいます。

 ※上記記事より引用、筆者にて太字化

 

私も長期にわたって、月あたり200時間残業を経験し、確かにメンタルヘルスのバランスを崩しかけた経験があるのですが、それ自体は副次的な要因だったと感じています。

 

その頃は経営コンサルタントとしての業務を始めたころで、自分の頭の中で作り上げた理想と自分の実力に乖離がありすぎたことで自己嫌悪にひたり、それをこじらせてしまった、というストレス源の影響を大きく受けていました。

 

この事件においても、彼女のメンタルヘルスを蝕むストレス源が存在したのではないでしょうか。

 

パワハラほどヒットポイントの高い攻撃はない 

 

では、この事件の場合はどうだったのか。

 

筆者個人の見解としては、与えられ続けた上司や先輩からのパワハラが、彼女のストレス源であり、この事件の最大の原因となっていたのではないかと思っています。

 

「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」

「会議中に眠そうな顔をするのは管理ができていない」

「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」

「今の業務量で辛いのはキャパがなさすぎる」

 わたし「充血もだめなの?」

 ※ご本人のTwitterより引用 

 

実際にどのような指導がなされていたのかを把握しているわけではありませんが、

「できてねぇな、ゴルァー!!」

と怒鳴りつけるのは彼女の立場を考えると、指導ではなくただのディスりです。

 

百歩譲って、経験が長くノウハウが蓄積されている社員ならば、まだ問題点を指摘されて、解決方法を探すことは出来たかもしれません。(怒鳴る必要はないですけどね)

でも、彼女は新卒社員で、社会人としてのノウハウは限りなく空っぽに近い状態。

 

そんな彼女に、出来ていないことを頭ごなしに言ったって彼女はなす術もないですよね…。 

 

  

①相手に期待するアクションがあるのなら、どう伝えたらいいか?

②相手の状態と、自分の期待にストレッチがある場合、どの程度のケアが必要か?

 

特に①は上司でなくても当たり前に考えるべきことなはずですが、それができない人は案外多く、これは根深い問題です。

 

仮に上司がしっかり考えた上で、Twitterにつぶやかれたような発言がなされたのなら、逆算的に考えると、彼女の自尊心を打ち砕くことが目的でした、ということになってしまいます。

実際にはこの言葉を投げた本人が目的を考えていたわけではないと思いますが…。

 

パワハラなどと変に横文字がついてしまうと思考停止に陥りやすくなりますが、要は上司の管理や指導と①②の気遣いなき『イチャモン』を混同して行使している状態だと解釈しています。

 

厚生労働省が2012年に実施した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では、以下のようにパワハラの行動的パターンを上げています。(ただし、職場のパワーハラスメントのすべてを網羅するものではないとのこと。)

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

上記の気遣いなきイチャモンは、2、4の合わせ技といったところでしょうか…。  

Twitterなどを見る限りでは、女子力の低さを指摘するような6もあったのでしょう…。

 

パワハラは長期にわたって受け続けてしまうと、

『できていない自分が悪いんだ…』

と自己肯定力をそぎ落とされていきます。

 

もちろん、早いうちに声を上げるのが一番ですが、誰もができるわけではありません。

それが指導としてまかり通っている環境だと、指導だ甘えるな!と一蹴されることもありますし、実際に線引きも難しいもの。

もう職場での立場を一切失ってもいい!!という姿勢なら、できるかもしれませんが、そんな姿勢になること自体、ハードルが高いはずです。

明日もここで働かなければいけないと思っている人が、波風を立たせて働きづらくなってしまわないか、想像してしまうのが自然ですよね。

 

彼女は、逃げ場のない状態でヒットポイントの高いパワハラという攻撃を受けていたのではないでしょうか。

 

これからどうしていったらいいのか

 

なぜ論点はすり替えられたのか?

 

―過重労働という定量的な情報の方が伝わりやすいからだろうか?

―彼女が受けた仕打ちを伝えても、時代や性別による捉え方の差があるため、ことの重大さを一様に伝えることが難しいのか?

パワハラの根絶は、単純に労働時間を減らすことより圧倒的に根が深い課題。人々が自然と難しい課題から目をそむけているのか? 

 

こんな記事もありました。 

www.sankei.com

電通強制捜査に着手してからわずか1カ月半、厚生労働省は28日、異例のスピードで立件にこぎ着けた。女性新入社員の過労自殺という痛ましい事実が世論を巻き込み、悪質企業に強い姿勢を示した形だ。政府の「働き方改革」で長時間労働の是正が進んでいることも捜査を後押しした。

※上記記事より引用、筆者にて太字化

 

政府や行政の「働き方改革」では、一億総活躍社会のための体制作り、労働時間の短縮を焦点に当てています。

それらの推進のためのホラーシナリオ役を背負わされたのかもしれませんが、厚生労働省パワハラの根絶推進の担当でもあるはずです。

 

なぜそっちのホラーシナリオ役を担わされることがなかったのでしょうか…。

理由は推察の域を出ませんが、本質的な議論がされなくなってしまっていることには変わりありません。 

 

じゃあどうすべきなのか?

 

パワハラはいけないことですが、それでもパワハラを行使してくる人がすぐにいなくなるわけではありません。

やる人は、やります。

 

そんなやつなんていなくなればいい!

私もそう思いますし、そのために声を上げることが重要ですが、それができないからパワハラが起きているのです。

 

パワハラ攻撃を繰り出してくる人への対処法は、メンタルヘルスを良好に保つためのライフラインとして、考えていくべきだと思います。

 

職場のストレスの大半は、人間関係によるものだと言います。

当ブログでも、職場のストレス源人間との付き合い方の中で、パワハラ野郎への対処法を考え、扱っていきます。

 

そしてもう一つ私たちができることは、自分が同じ穴のむじなにならないよう気を付けることです。

 

ネットを見るとこの事件に対して非常に攻撃的なことを書いたり、上司の実名は?などという書き込みを見ます。

人間は、自分が正しいと思うと、突如強気な態度に出て人を攻撃しがちですが、それこそがパワハラの根源的要素です。

やってはいけないと分かっているのなら、まずは自分がそれをやらないように気を付けることも重要です。

 

 

 

自身が亡くなったあとのこの世界を、彼女はどうのように見つめているのでしょうか…。 

偏重報道に期待することは、その違和感に気づいた人がたくさん増え、本来の課題に向き合うことです。